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今も残る天理の 昔ばなし

いわしの頭も信心から

 むかし、あるところに欲の深いおじいさんとおばあさんがおりました。商売をしておりましたが、少しも繁昌(はんじょう)しませんでした。

 ところが、となりの正直者のおじいさんとおばあさんのお店は、どんどん繁昌してお客さんがたえません。あのように向こうの店が繁昌して、こちらが繁盛しないのは何かわけがあるのだろうと考えた欲の深いおじいさん達は、毎日じっととなりの様子を見ておりました。

 すると、となりのおじいさんとおばあさんは、裏の庭の隅で何やら一生懸命お祈りしています。「あれだな」と思ったおじいさん達は、ある日こっそりのぞいてみました。するとそこには、小さなお社のようなものがあり、その中には立派な仏像がおまつりしてありました。

 欲の深いおじいさん達は、この仏像を自分の家に持って帰ってお祈りするときっと商売が繁昌するだろうと思い、家へ持って帰っておまつりしました。そして、正直者のおじいさんの家のお社の中には、昨日食べたいわしの頭を竹の串にさして立てておきました。

 何も知らない正直者のおじいさんとおばあさんは、それからも毎日、お祈りを続けておりました。また、欲の深いおじいさんとおばあさんもどうか商売が繁昌してお金がもうかりますようにと毎日お祈りしていましたが、少しも繁昌するどころかだんだんお客さんが来なくなり、お店をたたんでしまいました。

 ところが、正直者のおじいさん達のお店はますます繁昌して立派なお店になっていったということです。

 それで、「いわしの頭も信心から」と言われるようになったのだそうです。



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