ホーム ホーム >  昔ばなし > 娘にばける狐
今も残る天理の 昔ばなし

娘にばける狐

 竹之内の東、夏目谷の池の端に一本の老松が繁っていました。狐の住み処にふさわしい老松でした。村の土とり場であったこの場所に、狐は赤土を掘ってねぐらにし、池に入って(かえる)を食用にして住んでいました。ねぐらの穴はつぶしてもつぶしてもあけられてしまいます。この場所にいくと、何か狐にばかされる話がつきませんでした。

 ある夜、村の男はそこに若い娘が居るというので会いに行きました。そしてその娘と楽しい時間を過ごしました。男はそれが忘れられずその娘を嫁にしようと思いました。(こと)(ほか)重いと思いながらもその娘を背負って帰ってきました。村の入り口まで来ると、娘はずしりと重くなり、男は思わず手を離しました。大きな大きな目をむき出した娘は、男の目といわず口といわず、砂をかけ逃げて行ってしまいました。男は気がついて見ると、裸で砂だらけで、道で寝ていました。村の人に笑われ、男ははじめて娘が狐であったことを知り、夢から覚めたのでした。



ページの先頭へ