今から約1300年ほど前、天武天皇が伊勢神宮にお参りのため福住を通られたときのことです。
峠を越えてなだらかな道をしばらく行くと、山ふところにいだかれ、清らかな水をなみなみとたたえた美しい池が目の前に広がってきました。
天皇は、思わず持っておられた笏で池をお指しになり、「なんと美しい水じゃ!」と、しばらく感じいられたようすでした。さっそくお供の者が清らかな水をくんで天皇にさしあげました。
こうしたことから、この池を笏指池といい、池のある所を皇奉下「福住町南田字コホシタ ・ ・ ・ コホンダ」と呼ぶことになったそうです。
村の人たちの間では、シャクシキと呼び伝えられています。
その後、池は堤を残して五分の一ほどの小ささとなり、一面に水草がおい茂って見るかげもなくなりました。
また、泥が溜まって「底なし池」とも言われるようになり、ここにはまると奈良の猿沢池に出るという話まで広がりました。
天皇の通られた道も、いまではきれぎれになり、地元の人以外は通る人もないありさまですが、昔は池のほとりで、花火が打ち上げられたこともあったそうです。