ここ山田の「むねんどう」と呼ぶ山の頂に、焼地蔵と呼ばれる地蔵さんがおられます。これは雨乞いの神様で知られています。地元の農家では、夏の日照りで干ばつが続くと、作物は枯れてしまう、仕事が出来ない、さあ困ったことだ、どうしても雨が欲しいというので、こうした時に、村では相談が始まります。「嵩登り」をしてお願いしようか、村人達の話が決まると、たいまつに火をつけて、山に登り、山の頂きの道の端のお地蔵さんに雨乞いをするのです。みんなが揃って思い思いにたいまつを持ち、「雨たもれ、たもれやーい」「雨たもれ、たもれやーい」とお地蔵さんの前、たいまつをかざしてお願いするのです。
それでも雨が降らないと、また二回目が始まります。たいまつの煙が水を呼ぶのか、それとも、ご利益があったのか、時節のめぐりか雨が降ります。農家は大喜びし、そして雨喜びのおふれが回ります。千金にも優る雨水をいただき、一日の休みです。ごちそうをいただいて、今日の一日は遊びです。
今も遠い昔の語り草ですが、お年寄りの方は今も雨が降らないとよくその話をされます。