山田は天理市の中心部から東の方に十数キロメートル、海抜四百五十メートルの山中にある村で上山田、中山田、下山田の三つの村があります。
上山田の氏神さんは、八坂神社と言って村の中央に祀られていて、境内に樹の太さ約六メートル、樹の高さ数十メートルのいちょうの大木がそびえ、秋の黄葉のときの美しいこと。落ち葉の時は、黄色の雪が降っているようで、みるみるうちに境内が葉のじゅうたんを敷いたようになります。
中山田のお宮の八幡神社は、金竜寺の観音で有名な梨の木谷という深い谷へ登る右上の山の中にお祀りされています。八幡神社の下のほうにある養鱒場は、この梨の木谷から流れてくる美しい冷たい水で鱒を育てていたこともあります。
下山田の氏神様は、村の中央のこんもりとした森にあります。これが鎮守の森で春日神社といいます。春日神社には今、鰐口が一個残っていますが、銘に「応永廿三年卯月四日敬白大願主藤原国口」とあり、約五百数十年も前のものです。
大昔は、これら三つの神社が福路寺のみやん谷という所に合祀されていたそうです。今もみやん谷(宮谷)という呼び名や跡が残っています。ところが、上山田、中山田、下山田が相談の結果、一社づつ持ち帰ってお祀りしようということになりました。ある日、三村の代表者がみやん谷のお宮の前に集まって、どの社をどの村が持ち帰って祀るか、くじ引きをすることになりました。ところが、上山田の代表が遅れて行ったために、先に来ていた下山田、中山田の代表が、大きい立派な社は、移転も大変だし造営にも多くのお金がかかるので、小さい方をひいておいて、一番大きいのを上山田に残しておいたそうです。そのため、三村のお宮のうちで上山田の神社が一番大きく立派だと言い伝えられています。